心を育てる”待つ時間”

tomiko_tokyo
Feb 21, 2021

昔から、とにかく待てない子どもだった。

親とスーパーに行っても、じっとしていらられなくてすぐ迷子になる。電子レンジの残り時間が気になって途中で止めてしまう。何をしたらいいのかわからなくなってしまう病院の待ち時間も苦手。好きな人への返事はすぐにしない方がいいと言われても、即レスしてしまう。(むしろ返事来なくても連投してしまう)

最近、『Dispo』というアプリを新しくインストールした。「Instagramの再発明」と呼ばれる写真でつながるSNSだ。

『Dispo』のアプリで撮った写真は、翌朝の9時まで仕上がりを見れない。インスタントカメラのように現像まで時間がかかるのだ。

春の陽気の中、海沿いの街へ行ったのでシャッターを切ってみる。「どんな写真に仕上がるかな」とワクワクしながら今朝の9時を待った。

『Dispo』で撮った写真は、インスタントカメラのように独特な風合いに仕上がる。少し粗めでざらりとした質感、唯一無二の描写、どこか情緒のある風景。

学生の頃、イベントのたびにインスタントカメラを買って撮影していたことを思い出した。

枚数に制限があるから、何枚もシャッターを切ることはできない。でも、その分1枚1枚を大切に撮っていたように思う。

忘れかけていたあの頃の気持ちを、少しだけ思い出した。

去年の夏、初めてレモンシロップをつくった。レモンを輪切りにし、種を取り除き、瓶に氷砂糖と交互に詰める。

1日1回、瓶の中身を箸でかき混ぜて、約1週間ほど常温においたらできあがり。

時間も手間もかかったけれど、出来上がるのを楽しみに1週間過ごした。

手間も時間もかかったけれど、その分夏から冬にかけて長持ちしてくれた。

それまでいつもコーヒーばかり飲んでいたけど、レモンシロップをお湯やソーダで割って飲んだり、生活の中にほっとひと息つける時間が生まれた。

今年の夏は、何をつくろうか。

わからないことは、ネットで調べればすぐに解決策がわかる。SNSに写真を投稿すれば、数分後にはみんなの反応が見れる。Uber eatsを使えば数分後にはランチが届く。Amazonで買い物をすれば、翌日には手元に届く。

そんな時代の中で、待てなくなってしまったのは私だけじゃないのかもしれない。

待つことは、それなりに忍耐力を伴う行為で、でもその時間があるからこそ、ずっと待っていた”何か”に触れた時、心が動くものなのかもしれない。

今でも”待つ”のはそんなに得意じゃない。

でも、少し先の未来に小さな楽しみがあると思えば、待つのもそんなに悪くないなと思えるようになった。

今年の春は、桜を撮りに行こうかな。

そんな小さな楽しみを胸に、季節の移り変わりを待つ。

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